「普通自転車」という言葉を聞いたことがありますか?
当店で販売する自転車は、明らかに普通自転車でない物がありますし、普通自転車になるものも有るかもしれません。
ここでは、あまり知られていないにもかかわらず、とても重要な「普通自転車」について情報を提供します。
「普通自転車」という言葉は、ほとんどの人が知らない言葉と思いますが、日本の道路交通法や、関係する法律に明記されている車両の定義で、実は自転車に乗る際のルールに大きく影響する定義です。
簡単に言うと、歩道を例外通行できる車両として定義されたのが「普通自転車」です。
歩道を通行するのに問題のない大きさや構造の自転車です。歩道で歩行者がいたら、すぐに止まることができ、歩道上を歩く歩行者に対して、危害が加える可能性の低い自転車です。
歴史的には、歩道通行可能のルールを定めた、道路交通法(自転車道の通行区分)第六十三条の三を制定する際(昭和45年)には、2輪の自転車のみが例外として、歩道の通行可能となりましたが、2輪でも幅が広い自転車が歩道を通行するのは、歩行者妨害が発生する可能性があると考えたのか、その後、昭和53年になって普通自転車が定義され、その普通自転車のみが例外的に歩道通行が可能となりました。
一般的な実用車が、必ず普通自転車。ということではなく、ロード・バイクも普通自転車になりますし、自転車を製造した時点では普通自転車の規定を満たしていても、購入後、しっかりしたミラーを付けた結果、幅が規定より大きくなれば、普通自転車で無くなることもあります。(写真は警察官が乗る白自転車)
近年では、タンデム自転車の定員乗車の禁止を解除する道府県も多く、注意事項として「タンデム自転車は普通自転車ではないので、歩道通行はできません。」といった説明が警察からされます。これは、タンデム自転車が明確に普通自転車ではないので、ルール上の注意点です。
普通自転車の定義がどんなにわかりにくくても、タンデム自転車が普通自転車でないことは一目でわかるので、このような注意喚起がしやすいのだと思います。
同様に(普通の)マウンテン・バイクなどもハンドル幅が広く、普通自転車の規定に収まらない物が多く、簡単に計測しさえすれば普通自転車でないことは判断できます。マウンテン・バイクはそれほど珍しい存在でないにもかかわらず、タンデム自転車のような注意がされているのを見たことがありません。タンデム解禁時にタンデムに対してだけ注意喚起することで、他の一人乗り自転車は全てタンデムと違うルールで、歩道通行も可能。と勘違いされるのではないか。と懸念しています。
このようにルール上、通行方法に影響が出ますから、自分の乗っている自転車が普通自転車に該当するかどうかを知る必要があるはずですが、警察官ですら自分が乗っている自転車が普通自転車に該当するかどうか、正しく理解している人はほとんどいません。当然、警察に問い合わせても、普通自転車に該当するかどうか、判断できません。 もし自分が乗る自転車が、普通自転車の規格に適合するかどうか。を知りたい場合は、当店のような自転車店に確認してもらうことをお勧めします。
普通自転車の定義は、「道路交通法」と、その下位法令で、内閣府令である「道路交通法施行規則」で決められていますが、それらが2020年12月1日に改訂され、4輪の自転車も普通自転車の対象となりました。43年ぶりの変更となります。
車体の大きさ及び構造が内閣府令で定める基準に適合する自転車で、他の車両を牽引していないもの。
法第六十三条の三の内閣府令で定める基準は、次の各号に掲げるとおりとする。
普通自転車が、法的には、車両の中でどんな位置付けなのか、図をご覧ください。
車両は、自動車と軽車両と原動機付自転車に分類され、自転車はその中の軽車両の中の車両の一種になります。その自転車の中で、一定の条件を満たす物が普通自転車と、法律で定義されています。
ネット情報で「普通自転車で無い自転車は、軽車両になる。」なんて、発言を見ることが有りますが、普通自転車を含め、自転車は全て軽車両であり、車両です。
歴史的な経緯にあるとおり、普通自転車であることで、歩道での通行が可能となる場合があります。(多くの人がルールを知らずに歩道通行しているのが現状ですが。)
青い丸に歩行者と自転車のマークが描かれた標識が歩道に有ったり、歩道の路面に自転車の絵が書かれている場合、普通自転車のみが例外的に歩道を通行することが可能となります。
通行が可能と言っても、歩道はあくまでも歩行者のための空間ですので、歩行者がいる場合は、通行できるとは限りませんし、通行時は徐行(すぐに止まれる速度)義務がありますので、歩行者がまったく歩いていなくても、普通に走れるわけではありません。
(普通自転車であっても、普通走行ができるのは車道のみ。というのがルールです。)
一方、普通自転車ではない自転車は、歩道を横切る場合などを除いて、歩道通行はできません。これは、原動機付自転車や自動車等、自転車以外の車両と全く同じルールです。
2008年にルールが変わり、車道が危険な場合や、子供やお年寄り、体の不自由な人の場合、これらの標識等が無くても、歩道を通行することが可能となりましたが、普通自転車であることが条件です。
規制標識「自転車及び歩行者専用」(325の3)についての詳細は、自転車のルール/自転車に関係する標識/2. 規制標識「自転車及び歩行者専用」についてをご覧ください。
歩道と車道の区別の無い道路の入り口に、前述の歩道にある標識(自転車及び歩行者専用)と同じ図柄の標識が立っている場合があります。ほとんどが学校の通学路で、登校などの時間帯を指定して、自動車などの大きな車両の通行をさせないように規制しています。この場合の標識の意味は、普通自転車以外の車両の通行を禁止する、禁止標識です。
ですから普通自転車であることで、指定時間帯でも禁止対象にはならず、通行が可能となります。歩道と違い、徐行義務は有りませんので、ルールに従い普通に走行が可能です。
一方、普通自転車ではない自転車は、指定された時間帯は通行ができません。これも、自動車などと全く同じルールです。
規制標識「自転車及び歩行者専用」(325の3)についての詳細は、自転車のルール/自転車に関係する標識/2. 規制標識「自転車及び歩行者専用」についてをご覧ください。
法律で、軽車両は他の軽車両と並んで通行する事が禁止されていますが、この標識がある場合、軽車両の中で普通自転車だけが、他の普通自転車と横に並んで、通行できることが可能となります。
ただし、並んで通行が可能となるのは2台までで、この標識があっても、3台以上並んで通行する事はできません。
一方、普通自転車ではない自転車は、この標識があっても、他の軽車両(普通自転車も含む)と並んで通行する事はできません。
標識の下に「自転車を除く」というように書かれた補助標識がありますが、ここで「自転車」というのは、普通自転車のことを省略して表示した物です。
ですから、車両の進入禁止などの標識で「自転車を除く」となっていたら、普通自転車は禁止対象から除外されますので、進入が可能となります。
一方通行の指定なども同様で、「自転車を除く」となっていたら、普通自転車はその標識の対象外ですので、標識が無い場合と同じルールとなり、一方通行の義務はありません。
一方、普通自転車ではない自転車の場合は、この禁止等から除かれませんので、禁止の対象となったり、一方通行等の標識通りのルールに従うことが必要となりますので、注意が必要です。
くれぐれも標識にある文字の「自転車」は、自転車(全体)のことを示しているわけではない。ということに注意する必要があります。
標識にある文字の略称については、自転車のルール/自転車に関係する標識/4. 標識にある文字「自転車」が示す物をご覧ください。
法律ではありませんが、普通自転車であることで、TSマーク付帯保険(自転車の保険)に加入できます。
一方、タンデム自転車や、本格的なMTBや、クロスバイクなど、ハンドルの幅などが60cmを越える自転車は普通自転車では無い自転車になりますので、加入はできません。
また、保険加入時は、普通自転車でTSマークが張られていても、サイド・ミラーを調整するなどして60cmの幅を超えてしまったり、トレーラーを後付けすると、普通自転車では無い自転車になりますので、事故などがあってもTSマークの保険は適用されません。
TSマーク付帯保険に加入の詳細については、TSマーク自転車保険加入手続きをご覧ください。
「自転車道」という道路の部分があります。
この「自転車道」という言葉は、非公式にいろいろな使われかたをしますが、正確には歩道と車道と並列にある自転車専用の通行空間です。いわゆるサイクリングロードや、車道内にある自転車レーンを「自転車道」と呼ぶ例がありますが、間違いです。
自転車道は、東京都内や埼玉県、神奈川県には数例有りますが、それほど多く見かけることはありません。
この自転車道が有る場合、普通自転車の場合は、法律で、自転車道を通行しなければならないとなっていますが、普通自転車では無い自転車の場合は、自転車道を通行する義務が無くなり、車道を通行することが可能です。
また、2輪や3輪、もしくは4輪以上でもサイズが普通自転車と同じで、側車(サイド・カー)が無くトレーラー等を牽引していなければ、自転車道を通行することも可能ですから、普通自転車では無い自転車は、通行空間の選択肢が増えることになります。
「普通自転車の交差点進入禁止」という規制があります。これは、車道を通行していて交差点にさしかかった際に、普通自転車の場合は、そのまま直進ができず、交差点手前で歩道に上がってから交差点を渡る必要があります。
普通自転車は例外的に歩道も通行可能になるなど、優遇される存在として定義された物ですが、この規制では、普通自転車であるがために進入が禁止される。というルールになっています。
東京都内では、過去この規制が存在したようですが、良くない規制と言うことか、全て排除されました。群馬県など、他の地域で、大きめの交差点で存在する例があるようです。
普通自転車では無い自転車の場合は、もちろん歩道に上がることはできず、(規制名称の通り)この規制の対象外となりますから、交差点部でも 車道のみが通行空間となり、車道を普通に直進し、通常通りに交差点に進入することが可能となります。
一方、普通自転車の場合は、この禁止ルールの対象になりますので、そのまま直進して交差点に進入すると違反になり、歩道に上がって、徐行することが必要となります。普通に走行して交差点を通過することはできないわけです。
もちろん、歩道上は歩行者が優先ですので、歩道上を必ず徐行できるとは限らず、降りて押して通行することが必要になる場合もあります。