自転車に関係する標識について説明します。
道路交通に関係する標識は、法令(道路標識、区画線及び道路標示に関する命令)に基づいて決められています。公道を走る場合はこの標識が示すルールに従って、通行する必要がありますが、自転車など軽車両については、免許制でないこともあり、理解度が低いと感じています。違反も多く、他の車両との交通トラブルの元になる事も多いと思います。自転車に乗る人の多くが、関心がないため、法令のわかりにくい点について、法令の改正も進んでいないと感じます。
ここでは、自転車に直接関係する標識について、ピックアップして説明します。
わかりにくいもの、不思議な物、勘違いを招く物があります。問題提起を含め、考えてみましょう。
赤い丸枠に赤い斜め線の上に、自転車のマークが描かれた標識(「自転車通行止め(309)」)は、自転車の通行を禁止する標識です。
ここで言う「自転車」とは、普通自転車だけでなく、自転車全体を示すので、一般的なMTB(ハンドル幅が60cmを越える)やタンデム自転車も禁止対象となります。
自転車を除く軽車両のマークと組み合わされた標識(「車両(組合せ)通行止め(310)」)も、よく見かけますが、軽車両全体の通行を禁止する意味になりますので、軽車両である自転車についても通行が禁止されることになります。
自転車を除く軽車両ではない車両を示すマークとの組み合わせも存在しますが、これらの禁止標識で自転車のマークがある場合は、同様に自転車の通行が禁止されます。
種類 | 番号 | 表示する意味 | 設置場所 |
---|---|---|---|
自転車通行止め | (309) | 交通法第八条第一項の道路標識により、自転車の通行を禁止すること。 | 自転車の通行を禁止する道路の区間若しくは場所の前面又は道路の区間若しくは場所内の必要な地点における左側の路端 |
車両(組合せ)通行止め | (310) | 道路法第四十六条第一項の規定に基づき、又は交通法第八条第一項の道路標識により、標示板の記号によつて表示される車両の通行を禁止すること。 | 標示板の記号によつて表示される車両の通行を禁止する区域、道路の区間若しくは場所の前面又は区域、道路の区間若しくは場所内の必要な地点における道路の中央又は左側の路端 |
警察が公安委員会の意志決定に基づいて設置する標識で、道路管理者が設置する物ではありません。
この標識は、車両の中で、自転車を通行禁止にする標識です。普通自転車に限らず自転車全体の通行ができません。
都市部の主要道が交わる交差点で、信号による渋滞を回避するために、片方がオーバーパスになっている事がありますが、そのオーバーパスの陸橋部だけこの規制をかけ、自転車の通行を禁止してる例が多いようです。その場合は自転車は交差点で信号を待って平面交差することになります。
それに対して、写真の例は、東京都の都道316号(通称海岸通り)ですが、オーバーパスの橋梁部だけの通行禁止ではなく、5kmにわたって、路線自体の自転車の通行が禁止されています。
この標識が示す範囲は、歩道も含む道路全体に及びますので、このケースの場合は、全ての自転車が歩道通行もできません。歩道側には普通自転車が通行可能な歩道を示す意味の自転車及び歩行者専用(325の3)標識がありますが、それが示す意味と、この自転車通行止め(309)標識と矛盾しているので、警察に問い合わせたら、補助標識で「車道」示すことが漏れていた。ということで、その後修正されました。
この標識だけが有る場合、リアカーや、馬、牛、馬車、牛車は自転車では無いので、通行は禁止されません。自転車だけの通行を禁止する意味が解らないので、警察に問い合わせると、リアカーや馬はめったに通行しないので、禁止対象にしていない。という回答が多いです。
例えば、東京都の環状七号線(都道318号)の多くの橋梁部で、全ての軽車両が禁止されていますが、何故か葛飾区の青砥橋や大田区の都大橋が、自転車以外の軽車両の通行は禁止されていませんので、台車を押した人(自転車では無い軽車両)は通行できることになります。
車両の中で、標示板の記号によって表示される車両の通行を禁止する標識です。
この写真の例は、自転車と自転車以外の軽車両を意味する記号が示されているので、軽車両全体の通行禁止となります。軽車両全体が禁止対象ですから、もちろん全ての自転車が通行ができません。歩行者の通行禁止の標識も並列に設置されています。
この標識も、自転車通行禁止と同様、陸橋部だけ軽車両の通行を禁止し、側道に行けば通行できるのが通常ですが、この例は、鉄道を越える陸橋で、側道に行っても踏切など無く、完全に軽車両と歩行者の通行を阻む結果になっています。
青い丸に歩行者と自転車のマークが描かれた標識(「自転車及び歩行者専用(325の3)」)は、設置されている場所や設置者により意味が異なり、対象となる自転車が異なります。
標識の意味などを定めている法律である「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」によると、以下の3つの意味が有りますが、標識が同じなのに、複数の意味がある。というのに、問題を感じます。
標識は、交通規制などを示すもので、それに従って通行するためですが、その標識が示す意味が複数ある。となると、どの意味なのかを判断しないと、正しく通行ができません。
表示する意味 | 設置場所 | |
---|---|---|
A | 道路法第四十八条の十四第二項に規定する自転車歩行者専用道路であること。 | 自転車歩行者専用道路の入口その他必要な場所の路端 |
B | 交通法第八条第一項の道路標識により、普通自転車以外の車両の通行を禁止すること。 | 普通自転車以外の車両の通行を禁止する道路の区間若しくは場所の前面又は道路の区間若しくは場所内の必要な地点 |
C | 交通法第六十三条の四第一項第一号の道路標識により、普通自転車が歩道を通行することができることとすること。 | 普通自転車が歩道を通行することができることとする道路の区間の前面又は道路の区間内の必要な地点 |
この標識は、一般にサイクリング・ロードと呼ばれる、自転車歩行者専用道路を示す物です。
自転車歩行者専用道路は、道路法に規定があり「もつぱら自転車及び歩行者の一般交通の用に供する道路又は道路の部分を指定することができる。」とされていますが、ここで言う「自転車」とは、普通自転車という制限はありません。
国や県、市町村など、この自転車歩行者専用道路を管理する道路管理者が道路法に基づいて設置する標識で、警察が公安委員会の意志決定に基づいて設置することはありません。
この標識は、道路交通法に基づいて、普通自転車以外の車両の通行を禁止する。という規制を示す禁止標識です。
結果、歩行者と自転車が通行できる事になりますが、全ての自転車が通行できるわけではなく、普通自転車にかぎられます。
警察が公安委員会の意志決定に基づいて設置する標識で、道路管理者が設置する物ではありません。
歩道と車道の区別の無い道路の入り口に設置されているのを見かけます。ほとんどが学校の通学路で、登校などの時間帯を指定して、自動車などの大きな車両の通行をさせないように規制している例です。
紛らわしいのは、いわゆるサイクリング・ロードのような道路(自転車歩行者専用道路)に、この禁止標識が立てられていることがあることです。
その場合は、もちろん、普通自転車以外の自転車は通行できませんが、意味A(自転車歩行者専用道路を示す)と同じ標識で、設置場所も同じなので、見た目で区別が付きません。
警察にどうやって区別するのか問い合わせると、見て区別する方法は無い。とのことで、その都度、警察に問い合わせるしか無いようです。同じ標識なのに、複数の意味があるということの弊害だと考えられます。
右の写真の例は、補助標識に「管理用車両を除く」と書かれていますが、禁止対象である普通自転車以外の車両から管理用車両を除く。という意味で、管理用車両は通行ができる規制になっています。
この標識は、歩車道の区別がある道路で、歩道に設置されている例で、一番多く見かけます。
この標識があると、普通自転車は例外的に歩道通行ができますが、徐行義務があり、歩行者優先ですので、歩行者がいたら通行できない場合もあります。
明らかに設置場所が異なるので、他の意味Aと、意味Bとは、区別が付き、紛らわしくはありません。
青い丸に自転車だけのマークが描かれた標識(「自転車専用(325の2)」)についても、設置されている場所や設置者により意味が異なり、対象となる自転車が異なります。
標識の意味などを定めている法律である「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」によると、やはり以下のように3つの意味が有りますが、自転車道を示す意味(詳細は下記参照)以外には、使用頻度が極端に少ない標識なので、混乱は少ないと思います。
表示する意味 | 設置場所 | |
---|---|---|
A | 自転車道であること。 | 自転車道の前面又は自転車道内の必要な地点 |
B | 道路法第四十八条の十四第二項に規定する自転車専用道路であること。 | 自転車専用道路の入口その他必要な場所の路端 |
C | 交通法第八条第一項の道路標識により、普通自転車以外の車両及び歩行者の通行を禁止すること。 | 普通自転車以外の車両及び歩行者の通行を禁止する道路の区間若しくは場所の前面又は道路の区間若しくは場所内の必要な地点 |
この標識は、自転車道を示す物です。
自転車道とは、道路交通法や道路構造例に、「自転車の通行の用に供するため縁石線又は柵その他これに類する工作物によつて区画された車道の部分をいう。」と規定されている通り、道路の部分です。いわゆるサイクリング・ロードと呼ばれたりする単独の道路や、自転車レーンのような車道の車線のことではありません。歩道や車道と並行に区画された部分です。
自転車道は、東京都内や、神奈川県、埼玉県で数例見かけますが、必ずこの標識があるわけではありません。特に埼玉県の自転車道はこの標識が無い例が多く、歩道と車道の間に区画されている。という構造で判断するようです。一見不思議ですが、これは、通常、歩車道の区別を標識で行っていないことと同様です。
この自転車道が設けられている道路においては、普通自転車は自転車道を通行しなければならない。という決まりになっているので、普通自転車は、車道や歩道を通行することはできません。
国や県、市町村など、この自転車道がある道路を管理する道路管理者が道路法に基づいて設置する標識で、警察が公安委員会の意志決定に基づいて設置することはありません。
この標識は、自転車専用道路を示す物です。
自転車専用道路は、道路法に規定があり「もつぱら自転車の一般交通の用に供する道路又は道路の部分を指定することができる。」とされています。
自転車専用の道路ですので、自転車以外の車両や、歩行者は通行できません。ここで言う「自転車」とは、普通自転車という制限は無く、全ての自転車を意味します。
自転車専用道路はほとんど存在せず、普段出くわすことは、まずないと思います。どこにあるのか、ずっと探していましたが、2019年に旭川市でやっと見つけました。
国や県、市町村など、この自転車道がある道路を管理する道路管理者が道路法に基づいて設置する標識で、警察が公安委員会の意志決定に基づいて設置することはありません。
この標識は、道路交通法に基づいて、普通自転車以外の車両及び歩行者の通行を禁止する。という規制を示す禁止標識です。
結果、自転車のみが通行できる事になりますが、全ての自転車が通行できるわけではなく、普通自転車にかぎられます。
この意味の標識はほとんど見かけませんが、東京都の皇居東側の内堀通りの一部(都道301号線)設置されていて、補助標識により、毎週日曜日の午前10時から午後4時までの規制となります。
前述の通り、通行できるのは通自転車にかぎられますが、「タンデム車を除く」となっているので、禁止対象から、タンデム自転車は除かれています。一方、一般的なMTB(ハンドル幅が60cmを越える)等、タンデム自転車でも無く、普通自転車でも無い自転車は、禁止対象で通行ができませんので注意が必要です。
警察が公安委員会の意志決定に基づいて設置する標識で、道路管理者が設置する物ではありません。
重要なことなので、この禁止標識が示す範囲についても説明しておきます。
この標識で禁止される範囲は道路全体に及びます。「車道」とか「歩道部を除く」等の記述が無い限り、この禁止は歩道にも及びます。
その逆に、写真の様に標識が歩道に立っていても、車道にも及びます
ですから、日曜日のこの時間帯は歩行者は歩道を歩くことはできないルールであることを示しています。
2020年に地元警察に確認したら、当初は歩道は対象外。と言っていましたが、法律をよく調べてもらったら、歩道も対象であることが解ったそうです。歩行を禁止する意図はないので、標識を修正する予定とのこと。
標識の下などに文字で「自転車を除く」というような車両の種類を記載した表示がありますが、法令(道路標識、区画線及び道路標示に関する命令)によると、この「自転車」というのは、普通自転車のことを省略して示した物です。
ですから、車両の進入禁止などの標識で「自転車を除く」となっていたら、禁止対象から除かれるのは普通自転車のみであり、普通自転車以外の自転車は進入することができません。
道路標識、区画線及び道路標示に関する命令の、備考に、「 一 本標識板(本標識の標示板をいう。)」の「(六) 車両の種類の略称」に「規制標識に車両の種類を記載するときは、次の表の上欄に掲げる車両について、それぞれ同表の下欄に掲げる略称を用いることができる。」と説明された表があります。一部抜粋します。
車両の種類 | 略称 |
---|---|
(以前省略) | |
原動機付自転車 | 原付 |
二輪の自動車及び原動機付自転車 | 二輪 |
道路交通法施行規則第二十四条第一項に規定する小型二輪車及び原動機付自転車 | 小二輪 |
普通自転車 | 自転車 |
(以後省略) |
ここで決められている略称のルールでは、対象車両として本来の自転車全体を示す物はありません。自転車全体を示すつもりで「自転車」と書くと、それは普通自転車のことを示すことになります。省略表示でないつもりで「全ての自転車」とか「自転車全て」と記載すると、その文字列中にある「自転車」の示す意味は普通自転車になりますから、全ての普通自転車を示すことになり、意味がありません。
また「除く」ではなく、禁止標識の中で、禁止対象として「自転車」と書かれている場合、その自転車の意味も、同様に普通自転車になるので、禁止対象は普通自転車だけになります。ですから、普通自転車以外の自転車は禁止対象にはなりません。
車両通行止めなどの標識で「自転車」となっていたら、通行が禁止されるのは普通自転車のみであり、普通自転車以外の自転車は通行することができます。
この写真の例にある標識は、原動機付自転車(略称「原付」)普通自転車(略称「自転車」)のみが通行禁止対象になるので、一般的なMTB(ハンドル幅が60cmを越える)やタンデム自転車等、普通自転車以外の自転車は通行ができることになります。(地元警察署の規制担当者に確認済み)